2026/06/13 06:53
かつての私は、常に「もっと速く」「もっと遠くへ」と、
身体を限界まで突き動かすことに夢中になっていました。
トライアスロンの世界選手権を目指していた、
数年前のことです。
しかし、人生には時として、
思うように走れない日々が訪れることがあります。
心や身体のバランスが少しだけ崩れてしまい、
全力の走りがままならなくなるとき。
焦りやもどかしさのなかで、私たちはつい、
前へ進めない自分を責めてしまいがちです。
そんな時、私はランニングシューズではなく、
薄いベアフットサンダルを履いて、
ただ近所を10分、15分だけ歩くことにしています。
「走れないなら、せめて丁寧に歩こう」
そう割り切って一歩を踏み出すと、
驚くほど新鮮な世界が足元から広がっていきます。
分厚いクッションの靴で走るとき、
私たちは地面からの反発を得るために、
地面を「蹴る」「叩く」ように進んでいます。
しかし、ソールの薄いサンダルでゆっくり歩くと、
大地を「味わう」ように進むことができるのです。
アスファルトの硬さ、様々な凹凸の表情。
路面のわずかな傾斜、砂利や砂などの質感。
公園の土に切り替わった瞬間の、
包み込まれるような柔らかさと優しさ。
一歩進むごとに、足裏の無数のセンサーが、
大地のリアルな表情を手のひらで触るように読み取っていく。
その鮮烈な情報が脳へと伝わると、不思議なことに、
頭のなかをぐるぐる巡っていた雑音や焦りが、
すーっとなくなっていくのがわかります。
激しく走ることはできなくても、
人間本来の「歩く」というシステムは、
今この瞬間も確かに機能している。
その原始的な事実に、身体が救われるような感覚です。
固まっていた5本の指が自由に広がり、
大地の起伏に合わせて細かく形を変えていく。
ただ10分、15分と歩いただけで、
足の裏からふくらはぎにかけて血流が巡り、
じんわりと温かくなっていく。
それは、乱れていた自律神経のチューニングが、
足元から静かに、本来のニュートラルな位置へと
「リセット(Reset)」されていくプロセスです。
現代社会を生きる私たちは、誰もが多かれ少なかれ、
心や身体に揺らぎを抱えていると思います。
いつも完璧で、強く、走り続けられる人なんていません。
もし今、あなたも何かに行き詰まったり、
少し心が疲れてしまっているなら、
無理に走ろうとしなくて大丈夫です。
履くとどうしても速く走りたくなってしまう
ランニングシューズを一度靴箱に仕舞い、
サンダルに足を通してみてください。
そして、ただ15分、いや10分でも5分だけでもいい。
足裏の感覚に耳を澄ませて歩いてみてください。
それだけで、あなたの心と身体は、大地の上で
優しくゆっくりと整うのを感じてもらえるはずです。
明日のために、まずは足元から、
静かなリセットを始めてみませんか。
➔ 【公式note】「Reset:走れない日に、10分だけ歩くということ。」の全文を読む
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